検査の精度を検討するための指標として
- 感度(sensitivity)
- 特異度(specificity)
と呼ばれる2つの概念が有名です。
しかし、私としたことが、この2つの意味を勘違いしておりました!
今回は、正しい意味を具体例を用いて説明します!!
「カマかけ」のシチュエーション
突然ですが、あなたは高校生の男子です。(女子でもいいのですが、便宜上男子とさせてください!)
なかなか彼女が出来ないあなたは、他の男子も彼女が出来ていないことを確かめたくなりました。
そこで、クラスの男子全員に
「お前、最近彼女出来たらしいな」
と”カマをかける”ことにしたのです!
4パターンの結果
あなたの決死のカマかけ( 「お前、最近彼女出来たらしいな」 )の結果、クラスの男子たちの反応は以下の4パターンに分けられます。
すなわち、
- 実際に彼女がいて、「何で知ってるの!?」と引っ掛かる。
- 実際には彼女がいるが、「いや出来てないよ」と否定する。
- 実際に彼女はいないが、 「何で知ってるの!?」 となぜか引っ掛かる。
- 実際に彼女はいないので、「いや出来てないよ」と否定する。
の4つです。表にすると以下のようになります。

シチュエーション解説
このシチュエーション、実は、実際の検査の状況を基にしています。
それぞれの男子に彼女が…
→いる場合、「疾患あり」
→いない場合、「疾患なし」
となります。
また、あなたの「カマかけ」はまさに検査を表します。
それゆえ、
「カマかけ」に…
→引っ掛かった場合「検査結果:陽性」
→引っ掛からなかった場合「検査結果:陰性」
となります。
表にすると以下のようになります。

カマかけの結果(検査結果)
クラス全員にカマかけを行いへとへとになりながら、あなたは結果を集計します。その結果、以下のようになりました。

感度とは
感度とは、
「彼女がいる人のうち、カマかけに引っ掛かる人の割合」です。
または、
「疾患ありの人のうち、検査が陽性になる人の割合」です。
疾患のある人を いかに 感度よく(sensitiveに)識別できるか、という指標なわけですね。
上の表を基にして計算すると、10人中4人ですから、
「カマをかける」という検査で、彼女(疾患)の有無を検査するとき、
検査の感度は40%ということになります。
特異度とは
特異度とは、
「彼女がいない人のうち、カマかけに引っ掛からない人の割合」です。
または、
「疾患なしの人のうち、検査が陰性になる人の割合」です。
上の表を基にして計算すると、30人中29人ですから、
「カマをかける」という検査で、彼女(疾患)の有無を検査するとき、
検査の特異度は約97%ということになります。
僕がしていた勘違い
冒頭に行ったように僕は勘違いしてました。
すなわち、「カマかけ」に対して、引っ掛かった人のうち、本当に彼女がいる人の割合を感度と思い込んでいたのです!
ですから、僕は「カマかけ」の感度は高いと思っていたわけですね。彼女いないのに、慌てて「彼女がいる」ことにしちゃう人なんて少ないはずなんで。
しかし、これは感度ではなく陽性的中立( positive predictive value)という別の概念になるようです。 このような考え方では、5人中4人なんで、 陽性的中立 は80%ということになります。肌感どおり高いですね。
実際には、「カマかけ」の感度は低かったです。(40%)
なぜなら、彼女いる人の半数以上がカマかけに引っ掛からず、平静を装うことができたからですね。
まとめ
感度と特異度は、分母に疾患のあるなしが入るため、割合を考える時に、時間が順行していますね。
疾患がある→検査陽性になる
わけで、本来は、
検査陽性になる→疾患がある
という順番ではないですもんね。
ですが、やはり直感的には、後者の順序で考える方が有用であるように感じる方も多いと思います。その概念は陽性的中立なので、間違えないようにしたいですね。
では。
※なにか間違いがありましたらご指摘いただけると嬉しいです。
※「彼女がいることが疾患である」ような語り口になってますが、もちろんそんなことないです。
参考文献:
南風原朝和(2011)臨床心理学をまなぶ7 量的研究法,東京大学出版会